自分史をつくることで得られる8つのメリット

自分史をつくろうと考えた目的はどんなことだったでしょうか?
多くの人が、自分の人生の足跡を残したい、人生を振り返りたい、まわりの人々に感謝を伝えたい、という目的で自分史を書き始めています。

しかし、実際につくってみると、その目的以上にさまざまなメリットがあることに気がつきます。

最近では、自分史づくりが、学生の就職活動や企業の社員研修、介護の現場などさまざまな場面で活用されているのは、これら多くのメリットによるものでしょう。
ここでは、自分史をつくることで得られる代表的な8つのメリットをご紹介します。

1 生きてきた証を残すことができる

自分が生きてきた証や足跡を残しておきたい。こうした意味では、自分史に勝るものはありません。
人は誰でも、自分だけの経験をしています。そして、その経験は、自分が残さない限り消えてしまうものです。

なかには、敢えて残さずとも、家族の思い出のなかに自分の足跡は残る、世に残した成果で自分が生きた証は残ると、考える人もいます。
しかし、人の心の中の思い出は、いつか形を変えていきます。成果はたとえ偉業であっても、その過程や想いまでを伝えてくれるわけではありません。

⾃分史をつくることではじめて、自身の想いや経験や知識、知恵を、⼦どもや⼦孫、家族、友⼈など、いろいろな⼈に伝えることができるのです。そして、それは後世にも価値ある知恵や知見となるものかもしれません。

自分でつくった本や電子書籍は、国会図書館に納本することもできます。ちょっとわくわくしてきませんか?

2 ⾃分がよくわかる、よく知ってもらえる

⾃分史づくりの過程で自分の体験を振り返ることは、自分自身を客観視していくこと、自己を分析することにほかなりません。その結果、「自分はどんな人間なのか」という自己認識をもてるようになります。

最近では、副業での活動や個人事業主として、会社や組織の枠を超えて活動する人が増えていますが、個⼈として活躍するには、「あなたがどんな人か」というセルフブランディング(自己をブラン化すること)が重要になってきます。

そして、「自分はどんな人間なのか」という明確な自己認識がなければ、他の人に理解できるよう説明することはできないし、認知してもらうこともできません。

自分史をつくることで⾃分を客観的に⾒つめ直すことができれば、⾃分の強みや弱み、セールスポイントを⾒つけることができ、セルフブランディングや自己PRに活かすことができます。
就職活動で自分史が重要視されているのは、こんなところにも理由がありそうです。

3 ⾃分の人生を客観視することができる

人生とは、自分の足跡という糸で大きな布を織り上げていくようなものです。
自分史をつくりながら自分の体験を振り返っていくなかで、あるできごとの点と別のできごとの点がつながって線となり、予想もつかなかった絵柄が生まれることがあります。

歩いているときは自分の足元しか見えないけれど、カメラを引くように視野を広げていくと、あなたのほかに誰か別の人が映っているでしょう。その道が過去や未来の様々な地点につながっていることが見えてきます。
このように、自分史をつくると、人生を客観的に見ていくことができるのです。

客観的に見ることができると、過去のできごとも違った様相を見せてきます。

心理学者アルフレッド・アドラーは、過去の経験が私たちの何かを決定しているのではなく、私たちが過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって自らの生を決定していると考えました。

例えば、挫折や理不尽で不遇なできごとでも、あらためて振り返ると、その経験にはプ
ラスの意味があったことに気づくことがあります。

また、さまざまな経験を経たいま、過去を捉え直すことで過去のできごとの解釈が変わるかもしせん。こうした発見や意味づけの変化が、未来の人生を自分らしく豊かなものにしてくれるでしょう。

4 「生きがい」を見つけるきっかけになる

毎日ハリのある人生を送りたいのに、生きがいが見つからないという人がいます。あるいは、生きがいを見失ってしまった人、奪われてしまった人もいるでしょう。
また、大人になると、義務の中で生きることによって、やりたいことや生きがいを見つけにくくなることがあります。

生きがいのヒントが隠れている場所をご存じですか?

子ども時代に夢中になっていたこと。できなかったけれど憧れていたこと。ちょっとかじったけれど途中でやめてしまったこと。
実は、過去の記憶の中に生きがいの種を見つけることがよくあります。

自分史をつくるうえで過去を振り返ると、忘れていた子どもの頃の夢や、⾃分が好きだったこと、得意だったことを思い出すことができ、自分の個性や強みが⾒えてきます。そこに、⾃分の本当にやりたいことや⽣きがいを⾒つけるヒントがあるはずです。

自分の好きなことや得意を見つけることは、生きがい探しだけでなく、新しい仕事探しや自分のブランディングにも役立ちます。

5 ⾃⼰肯定感が⾼まる

「自分には、誇れる功績も能力もなく、残せるような価値がある歴史なんてない」と言う人が少なからずいます。

日本人は謙虚な性質も影響して、自己肯定感が低い民族と言われていますが、
心理学では、自己肯定感が低い状態をストレングスブラインドネス(強みの無知)といい、自分の強みを理解していない状態をさしています。

自分を客観的に⾒つめ直す自分史作成の過程では、人生を棚卸ししていくことで、⾃分の強みや得意がよく見えるようになり、自己肯定感を高めることにつながります。

また、普段は忘れていても、人は誰でも多くのことを経験しています。その時々に、自分なりに努力をして乗り越えてきたはずです。

自分史を通じて過去を振り返ることで、私たちは自分が経験した挫折や達成に向き合うことができ、「いろいろあったけど、けっこう頑張って来たな」と⾃⼰を肯定することができるようになるのです。
人生の主人公は自分自身。主体性をもった人生を送るために、自分史は格好のツールとなります。

6 コミュニケーションを深められる

⾃分史はコミュニケーションの道具にも活⽤できます。
どのような環境で育ったのか、どのような経験を重ねてきたのか。相手をよく知ること、自分をよく知ってもらうことが、コミュニケーションをよくする基本となるからです。

自分史を見てもらう、互いに見せ合うことで理解とコミュニケーションが深まることから、ある⼤⼿企業では、社内コミュニケーションの活性化に⾃分史を活⽤しています。

また自分史をつくる過程でも、コミュニケーションは生まれます。
自分史は、あなたと関わった人たちとのストーリーです。
自分の記憶について周りの人に尋ねてみると、意外にもまったく異なった事実が明らかになることもよくあります。

自分史をつくり始めると、記憶を確認したり、知らないことを訪ねたり、親戚や家族、友人に話を聞く機会も多くなり、コミュニケーションを深めることができます。
もしかすると、これまで交友が途切れていた古い友人や知人との新たなコミュニケーションのはじまりになるかもしれません。

一方、両親や祖父母の自分史をつくることで生まれるコミュニケーションもあります。
大人になると、両親や祖父母の昔の話を聞く機会は減ってきますが、自分史をつくりながら、自分史づくりを手伝いながら、思いもよらない話を聞くことができ、コミュニケーションが深まっていきます。

7 脳を活性化できる

⾃分史をつくる際に、思い出そうとしたり、まとめようとしたりすることは、脳の活性化につながります。

脳科学者の茂木 健一郎氏によれば「脳が思い出そうとしている時に使う回路は、脳が新しいものを創造する時に使う回路と共通している」とのこと。
思い出す回路を強化することにより、創造⼒を⾼めることができるといいます。

『ど忘れをチャンスに変える思い出す⼒ 記憶脳からアウトプット脳へ︕』(茂⽊健⼀郎著・河出書房新社)では、「暗記・記憶=インプット」脳から、「思い出す・創造する=アウトプット」脳に変えることが、現代⼈にとって不可⽋であることを、脳科学から明らかにしています。
また、脳を活性化する「回想法」のひとつとして自分史が注目されています。回想法とは、1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法で、過去の懐かしい思い出を語り合うことで脳が刺激され、精神状態の安定や認知機能の改善が期待できるというもの。
こうした効果を高齢者の認知症予防や介護に役立てようと、さまざまな場で自分史づくりが広がっています。自分史の作成を支援する自治体もあり、日経新聞によれば、ロボットに自分史を記憶させて本人と会話してもらう研究も進んでいるということです。

8 つくること自体が楽しい

⾃分史をつくり始めると、さまざまな楽しさと出会うことができます。
過去を懐かしむ楽しさ、
次々と数珠つなぎのように思い出される楽しさ、
新たな自己発見をする楽しさ、
調べることで事実がわかる楽しさ、
過去の意味づけが変わることの楽しさ、
自分なりの方法で表現する楽しさ。

幼いころの友人はどうしているかと探して再会したり、昔住んでいた街や、通っていた学校を訪れてみたり。タイムスリップしたような気分を味わうこともできます。

子どもの頃に住んでいた街をめぐりながら、父や母に愛されて育った記憶に浸ることも、部活の思い出に触発されて、もう一度スポーツを始めるといった楽しみが生まれることもあります。

そんな楽しさを味わいながら、いよいよ自分史ができあがったときの達成感は、ことさらです。

まとめ

以上 自分史8つのメリットについておつたえいたしました。

ぜひ、自分史づくりを楽しんでください。